パーキンソン病と呼吸の関係性

パーキンソン病というと、手足の震えや筋肉のこわばり、動作の遅さなどの運動症状がよく知られています。しかし、病気の影響は手足だけにとどまらず、呼吸に関わる筋肉や胸郭の動き、姿勢、嚥下、発声などにも及ぶことがあります。

特に病気が進行すると、呼吸が浅くなったり、咳をする力が弱くなったりすることで、日常生活での息切れや誤嚥性肺炎などにつながる可能性があります。

そのためパーキンソン病では、運動機能だけでなく「呼吸機能」についても総合的に評価し、必要に応じて運動療法や呼吸リハビリテーションを取り入れることが重要です。

本記事では、パーキンソン病と呼吸の関係について、呼吸機能が低下する原因から具体的な症状、評価方法、リハビリテーションまで詳しく解説します。

目次

パーキンソン病では呼吸機能にも影響が生じる

パーキンソン病は、脳内のドパミン神経系などが障害されることで、振戦、筋強剛、無動・寡動、姿勢反射障害などを生じる神経変性疾患です。

こうした症状は手足だけに現れるものではありません。呼吸に必要な胸郭や体幹の運動にも影響し、胸を十分に広げにくくなったり、呼吸筋を効率よく働かせにくくなったりする場合があります。

さらに、姿勢異常、嚥下障害、発声機能の低下なども加わることで、呼吸機能はさまざまな側面から影響を受けます。

パーキンソン病における呼吸障害とは

パーキンソン病における呼吸障害は、一つの原因だけによって生じるものではありません。

代表的には、胸郭の動きの低下、呼吸筋機能の低下、姿勢異常、上気道の運動障害、嚥下障害などが複合的に関係します。

その結果、十分な量の空気を吸ったり吐いたりしにくくなる「拘束性換気障害」に近い特徴がみられることがあります。また、呼吸と発声の協調性が低下したり、咳の力が弱くなったりすることもあります。

ただし、呼吸機能の変化には個人差が大きく、すべてのパーキンソン病患者に同じような症状が現れるわけではありません。

運動症状だけでなく呼吸にも注意が必要な理由

呼吸機能の低下は、初期には自覚しにくい場合があります。

歩行速度が低下して活動量そのものが減っていると、強い運動をする機会が少なくなるため、呼吸機能が低下していても「息苦しい」と感じにくいことがあるためです。

しかし、呼吸機能の低下が進むと、歩行や外出などの日常活動で疲れやすくなったり、会話中に息が続きにくくなったりする可能性があります。

さらに、咳の力や嚥下機能が低下すると、気道に入った唾液や食物を十分に排出できず、誤嚥性肺炎のリスクにも関係します。

そのためパーキンソン病では、手足の運動機能だけではなく、呼吸・発声・嚥下を含めて状態を確認することが重要です。

パーキンソン病が呼吸に影響する原因

パーキンソン病による呼吸機能の変化には、筋肉の問題だけでなく、姿勢や神経系、薬物療法など複数の要因が関係します。

特に重要なのが、胸郭の可動性低下と体幹の筋強剛です。

呼吸は肺だけで行われているわけではありません。横隔膜や肋間筋などの呼吸筋が働き、胸郭が拡張・収縮することで肺に空気が出入りします。

そのため、胸郭や体幹の運動が制限されることは、呼吸機能そのものに影響を与えます。

胸郭や呼吸筋の動きが低下する

呼吸を行うためには、横隔膜、肋間筋、腹筋群など多くの筋肉が協調して働く必要があります。

息を吸うときには横隔膜が下降し、肋骨が持ち上がることで胸郭が広がります。一方、強く息を吐いたり咳をしたりするときには、腹筋群なども重要な役割を担います。

パーキンソン病では、動作が小さくなる「寡動」の影響が体幹や胸郭にも現れることがあります。

その結果、呼吸時の胸郭運動が小さくなり、一回の呼吸で取り込める空気の量が低下する可能性があります。

筋固縮によって胸郭の拡張が制限される

パーキンソン病の代表的な症状の一つに筋強剛があります。

体幹周囲の筋肉に筋強剛が生じると、肋骨や胸椎の動きが制限され、呼吸時に胸郭を十分に広げにくくなる場合があります。

胸郭が硬くなると、一回換気量が小さくなり、浅い呼吸になりやすくなります。

また、十分に息を吸えなければ、強い咳を行うための空気量も確保しにくくなります。

そのため、胸郭の柔軟性を保つことは、呼吸機能だけでなく排痰機能の維持という点でも重要です。

前傾姿勢や姿勢異常が呼吸を浅くする

パーキンソン病では、頭部や体幹が前方へ傾いた屈曲姿勢がみられることがあります。

前傾姿勢が強くなると胸郭が閉じた状態になり、肋骨を広げる動きや横隔膜の働きが制限される可能性があります。

また、円背が強くなることで胸椎の伸展運動が減少すると、深呼吸時の胸郭拡張も小さくなることがあります。

そのため呼吸機能を考える際には、肺や呼吸筋だけではなく、座位・立位姿勢や胸椎、肩甲帯の可動性も含めて評価することが重要です。

自律神経機能の変化が呼吸に影響する

パーキンソン病では、自律神経系の障害がみられることがあります。

自律神経は心拍数、血圧、消化機能など、意識せずに行われる身体機能の調節に関わっています。

呼吸そのものは自動的な制御と随意的な制御の両方によって調節されており、パーキンソン病に伴う神経系の変化が呼吸調節に影響する可能性も指摘されています。

ただし、息苦しさの原因は非常に多いため、「パーキンソン病による自律神経障害」と自己判断することは避ける必要があります。

薬の効果や症状の日内変動が呼吸に関係することもある

パーキンソン病では、レボドパなどの薬物療法によって症状をコントロールします。

薬がよく効いている「オン」の時間帯と、効果が弱くなった「オフ」の時間帯で、身体の動きや筋緊張が大きく変化する人もいます。

そのため、呼吸のしやすさや胸郭の動きについても時間帯によって変化を感じる場合があります。

また、一部では薬物療法に関連したジスキネジアなどが呼吸パターンに影響する可能性もあります。

息苦しさが薬の服用時間と関連している場合には、症状が出現する時間や服薬との関係を記録し、主治医へ相談することが重要です。

パーキンソン病でみられやすい呼吸機能の変化

パーキンソン病では、呼吸そのものだけでなく、咳、発声、運動耐容能などにも変化が現れる可能性があります。

これらは互いに独立した問題ではなく、胸郭運動や呼吸筋機能の低下を背景として関連している場合があります。

肺活量や換気能力が低下することがある

胸郭の可動性や呼吸筋機能が低下すると、十分に息を吸ったり吐いたりする能力が低下する可能性があります。

特に体幹の筋強剛や胸郭の可動性低下が強い場合には、肺そのものに病気がなくても、胸郭を十分に広げられないことで換気量が低下することがあります。

ただし、実際の呼吸機能は年齢、活動量、喫煙歴、心肺疾患の有無などによっても左右されるため、必要に応じて医療機関で呼吸機能検査を行うことが重要です。

咳をする力が弱くなる

咳は、気道に入った異物や痰を身体の外へ排出するための重要な防御反応です。

強い咳をするためには、まず十分な量の空気を吸い込み、その後声門を閉鎖し、胸腔内圧を高めて一気に空気を吐き出す必要があります。

パーキンソン病では、吸気量の低下、呼吸筋機能の低下、声門運動の問題などによって、咳の勢いが弱くなる可能性があります。

咳嗽力が低下すると、痰や誤嚥した物質を排出しにくくなるため、呼吸器感染症の予防という点からも注意が必要です。

呼吸と発声の協調性が低下する

声を出すためには、肺から送り出される呼気を声帯で振動させる必要があります。

パーキンソン病では、声が小さくなる、抑揚が乏しくなる、話している途中で声量が低下するといった発声障害がみられることがあります。

こうした症状には喉頭機能だけでなく、呼吸による十分な呼気圧を確保できないことも関係します。

そのため発声訓練では、声そのものだけでなく、姿勢や呼吸、呼気のコントロールを含めて練習することがあります。

運動時に息切れを感じやすくなる

パーキンソン病では、歩行能力の低下や活動量の減少によって全身持久力が低下することがあります。

身体活動量が少ない状態が続くと、いわゆる廃用によって心肺機能や筋持久力がさらに低下し、少ない運動量でも息切れや疲労を感じやすくなる悪循環に陥る可能性があります。

呼吸機能そのものだけでなく、下肢筋力や歩行能力、日常的な活動量なども含めて考えることが重要です。

パーキンソン病と嚥下・誤嚥の関係

パーキンソン病の呼吸管理を考えるうえで、嚥下障害は非常に重要な問題です。

食物や唾液が誤って気道へ入る「誤嚥」は肺炎につながる可能性があるためです。

呼吸機能、咳嗽機能、嚥下機能は互いに密接に関係しており、一つだけを切り離して考えることはできません。

嚥下機能の低下によって誤嚥が起こりやすくなる

パーキンソン病では、舌や咽頭、喉頭など嚥下に関係する筋肉の動きが小さくなったり、タイミングがずれたりすることで、嚥下障害が生じることがあります。

食べ物を口から喉へ送り込む能力が低下したり、気道を閉鎖するタイミングが遅れたりすると、食物や飲み物が気道へ侵入する可能性があります。

嚥下障害は食事量や栄養状態にも影響するため、体重減少や食事時間の延長などにも注意が必要です。

不顕性誤嚥ではむせがみられないこともある

誤嚥すると必ずむせると思われがちですが、実際にはむせを伴わない場合があります。

これを「不顕性誤嚥」と呼びます。

咽頭や喉頭の感覚が低下している場合には、食物や唾液が気道へ入っても咳反射が十分に起こらないことがあります。

そのため「むせていないから問題ない」とは限りません。

食後に声が湿ったようになる、痰が増える、微熱を繰り返す、肺炎を繰り返すなどの変化がある場合には、医師や言語聴覚士などによる専門的な嚥下評価が必要になることがあります。

誤嚥性肺炎の予防が重要になる

誤嚥性肺炎は、口腔内の細菌を含む唾液や食物などが気道へ入り、肺で感染を起こすことで発症します。

そのため予防には、嚥下機能だけではなく、口腔内を清潔に保つことや、咳をする能力を維持することも重要です。

食事時の姿勢調整、適切な食形態、口腔ケア、嚥下訓練、呼吸機能・咳嗽機能の維持などを総合的に行う必要があります。

呼吸機能の低下が日常生活に与える影響

呼吸機能が低下すると、単に「息がしにくい」という問題だけではなく、歩行、会話、食事、睡眠など日常生活のさまざまな場面に影響する可能性があります。

歩行や運動時の持久力が低下する

身体を動かすためには、筋肉へ十分な酸素を届ける必要があります。

呼吸機能や心肺持久力が低下すると、歩行や階段昇降、外出などで疲れやすくなります。

活動量が減少すると筋力や持久力もさらに低下するため、「疲れるから動かない、動かないからさらに疲れやすくなる」という悪循環を防ぐことが重要です。

会話や発声が小さくなることがある

パーキンソン病では、小声症と呼ばれる声量低下がみられることがあります。

呼吸によって十分な空気を送り出せなければ、長い文章を話すことが難しくなったり、話の途中で声が小さくなったりすることがあります。

コミュニケーション能力にも影響するため、必要に応じて言語聴覚士による発声・構音訓練を受けることも重要です。

睡眠や日中の活動性にも影響する

パーキンソン病では、夜間の身体の動きにくさや睡眠障害などがみられることがあります。

また、睡眠時無呼吸症候群など別の睡眠関連呼吸障害を併存している可能性もあります。

日中の強い眠気、いびき、睡眠中の無呼吸を指摘される場合には、パーキンソン病だけの問題と考えず、医療機関へ相談することが大切です。

パーキンソン病の呼吸状態を確認するポイント

呼吸状態を評価するときには、単に酸素飽和度や呼吸回数を見るだけでは十分ではありません。

呼吸の深さ、胸郭運動、姿勢、咳、嚥下、活動時の息切れなどを総合的に確認する必要があります。

呼吸の深さや回数を確認する

まず確認したいのが、安静時の呼吸状態です。

呼吸回数だけでなく、一回一回の呼吸が浅くなっていないか、呼吸リズムが乱れていないか、肩や首の筋肉を過剰に使っていないかなどを観察します。

必要に応じてSpO2(経皮的酸素飽和度)なども確認しますが、数値が正常でも呼吸機能に問題がないとは限りません。

胸郭の動きや姿勢を評価する

呼吸時に胸郭が左右対称に動いているか、深呼吸をしたときに十分に拡張するかを確認します。

また、円背や体幹前傾、頭部前方位などの姿勢も重要です。

胸椎や肩甲帯の可動性が低下している場合には、それらが胸郭運動を制限している可能性があります。

理学療法では、呼吸だけを見るのではなく、姿勢や身体運動との関係性を評価することが重要です。

咳の強さや痰の出しやすさを確認する

十分に強い咳ができるかどうかも重要な評価項目です。

「痰があるのに出せない」「咳をしても弱い」といった状態は、気道クリアランス低下のサインとなる場合があります。

必要に応じて、咳の強さを客観的に評価する咳嗽時最大呼気流量(Cough Peak Flow:CPF)などが用いられることもあります。

嚥下や発声の状態もあわせて確認する

呼吸・発声・嚥下は、いずれも喉頭や呼吸筋の働きと密接に関係しています。

そのため、食事中のむせ、飲み込みにくさ、食後の声質変化、声量低下なども確認します。

問題が疑われる場合には、医師、言語聴覚士、看護師、管理栄養士、理学療法士などが連携して対応することが重要です。

息切れが起こる場面や活動量を把握する

「息切れがあるか」だけではなく、どの程度の運動で起こるのかを確認することが重要です。

例えば、

  • 室内歩行では問題ないが屋外歩行で息切れする
  • 階段を上ると息苦しくなる
  • 会話しながら歩くと疲れる
  • 入浴や更衣で息切れする

など、具体的な生活場面を確認します。

症状と活動量の関係を把握することで、適切な運動強度やリハビリテーション内容を設定しやすくなります。

パーキンソン病に対する呼吸リハビリテーション

パーキンソン病の呼吸リハビリテーションでは、単に深呼吸を繰り返すのではなく、胸郭の柔軟性、姿勢、呼吸筋、咳嗽、全身持久力などを総合的に改善していくことが重要です。

症状や身体機能には個人差があるため、その人に合わせたプログラムを設定する必要があります。

深呼吸や胸郭運動で換気を促す

胸郭の動きが小さくなっている場合には、ゆっくりと大きく息を吸う練習や、胸郭の動きを意識した運動が行われます。

両腕を広げながら息を吸うなど、上肢運動と呼吸を組み合わせる方法もあります。

パーキンソン病では動作そのものが小さくなりやすいため、「大きく身体を動かす」という意識を呼吸運動にも取り入れることがポイントです。

呼吸筋トレーニングを取り入れる

呼吸筋の機能低下がみられる場合には、吸気筋トレーニングなどを行うことがあります。

専用の器具を用いて吸気に抵抗をかけることで、横隔膜などの吸気筋をトレーニングする方法です。

ただし、適切な負荷量は人によって異なります。

心肺疾患などの合併症がある場合もあるため、専門家の評価を受けたうえで実施することが望まれます。

姿勢を整えて胸郭を動かしやすくする

呼吸改善には姿勢へのアプローチも重要です。

前傾姿勢や円背が強い場合には、胸椎伸展運動や肩甲帯運動、体幹伸展運動などを行い、胸郭を広げやすい環境を作ります。

例えば、胸を開くストレッチや肩甲骨を動かす運動などを取り入れることで、呼吸時の胸郭運動を促しやすくなります。

有酸素運動で全身持久力を維持する

ウォーキングや自転車運動などの有酸素運動は、心肺持久力や身体活動量の維持に役立ちます。

また、運動はパーキンソン病における身体機能維持の観点からも重要です。

重要なのは、無理に高強度の運動を行うことではなく、その人の身体能力に合わせて継続できる運動量を設定することです。

運動中に強い呼吸困難、胸痛、めまいなどがみられる場合には運動を中止し、医療機関へ相談する必要があります。

咳嗽訓練で排痰能力を高める

咳の力が弱い場合には、十分に息を吸ってから強く吐き出す練習などを行うことがあります。

単に何度も咳をするだけでは疲労してしまうため、吸気、声門閉鎖、強い呼気という咳の一連の動作を適切に行うことが重要です。

痰が多い場合には、排痰法や体位調整などを組み合わせることもあります。

発声・嚥下訓練と組み合わせて行う

呼吸機能は発声や嚥下とも密接に関係しています。

そのため、声量低下や嚥下障害がある場合には、呼吸練習だけではなく、言語聴覚士による発声訓練や嚥下訓練を組み合わせることが重要です。

多職種で身体機能を総合的に評価することで、より安全で効果的な支援につながります。

自宅でできる呼吸機能低下の予防方法

呼吸機能を維持するためには、特別なトレーニングだけでなく、毎日の生活のなかで身体を動かすことが重要です。

ただし、病状や体力によって適切な運動内容は異なるため、安全に行える範囲で実施しましょう。

日常的に身体を動かす習慣をつくる

パーキンソン病では、身体を動かしにくくなることで活動量が低下しやすくなります。

活動量の低下は、筋力、持久力、呼吸機能のさらなる低下につながる可能性があります。

散歩、家事、体操などでもよいため、可能な範囲で日常的に身体を動かす習慣を作ることが大切です。

胸を広げるストレッチを取り入れる

胸郭や肩周囲の筋肉が硬くなると、胸を広げにくくなります。

両腕を横へ広げる、背筋を伸ばす、肩甲骨を寄せるなどの簡単な運動を取り入れることで、胸郭の柔軟性維持につながります。

ただし、無理に反らしたり強く伸ばしたりする必要はありません。

痛みが出ない範囲でゆっくり行うことが基本です。

深い呼吸を意識する時間をつくる

日常生活では無意識のうちに呼吸が浅くなっていることがあります。

一日に数回、姿勢を整えてゆっくり息を吸い、ゆっくり吐く時間を作ることで、胸郭を大きく動かす機会を確保できます。

呼吸だけに集中するよりも、腕を広げる運動などと組み合わせると、より大きな胸郭運動を意識しやすくなります。

食事中の姿勢や嚥下状態にも注意する

誤嚥予防という観点では、食事時の姿勢も重要です。

椅子に安定して座り、身体が大きく傾いた状態を避けながら食事を行います。

頻繁にむせる、飲み込みに時間がかかる、食事後に声が変わるといった症状がある場合には、自己流で食事形態を変更するのではなく、医療機関へ相談することが重要です。

息苦しさがある場合に注意したいこと

パーキンソン病の患者が息苦しさを訴えた場合、「パーキンソン病だから」と決めつけることは危険です。

呼吸困難は、さまざまな疾患によって起こる症状だからです。

呼吸困難をすべてパーキンソン病の影響と考えない

パーキンソン病によって胸郭運動や呼吸筋機能が低下する可能性はあります。

しかし、息苦しさの原因には肺炎、心不全、慢性閉塞性肺疾患、喘息、貧血など、さまざまな病態があります。

そのため、新しく息苦しさが出現した場合や、以前より症状が悪化した場合には医療機関で原因を確認することが重要です。

肺炎や心疾患など他の病気にも注意する

発熱、咳、痰、強い倦怠感などを伴う場合には肺炎などの呼吸器感染症の可能性があります。

また、胸痛、動悸、むくみ、横になると息苦しいといった症状がある場合には、心疾患が関係している可能性もあります。

パーキンソン病という診断があることで、別の病気による症状を見逃さないよう注意する必要があります。

急激な呼吸状態の変化では早めに医療機関へ相談する

突然強い息苦しさが出現した場合や、意識状態の変化、胸痛、唇が紫色になるチアノーゼなどがみられる場合には、緊急性の高い状態である可能性があります。

このような場合には自宅で様子を見続けず、速やかに医療機関を受診することが重要です。

まとめ|パーキンソン病では運動・姿勢・嚥下を含めた呼吸管理が重要

パーキンソン病では、手足の震えや筋強剛、動作緩慢などの運動症状だけではなく、呼吸機能にも影響が生じることがあります。

体幹の筋強剛や寡動によって胸郭の動きが小さくなることで、呼吸が浅くなったり、十分な咳ができなくなったりする可能性があります。また、前傾姿勢や円背などの姿勢異常も胸郭の拡張を制限する要因となります。

さらに、パーキンソン病では嚥下機能が低下することがあり、咳嗽力の低下と重なることで誤嚥性肺炎のリスクにつながる可能性があります。

そのため、呼吸管理では「肺だけ」を見るのではなく、胸郭運動、姿勢、呼吸筋、咳、嚥下、発声、全身持久力などを総合的に評価することが重要です。

深呼吸や胸郭運動、姿勢改善、有酸素運動、呼吸筋トレーニングなどを状態に合わせて取り入れることで、呼吸機能や活動性の維持につながる可能性があります。

一方で、息苦しさの原因が必ずしもパーキンソン病とは限りません。急激な呼吸困難や発熱、胸痛などがみられる場合には、肺炎や心疾患など別の病気の可能性も考え、早めに医療機関へ相談することが大切です。

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