パーキンソン病は太りやすい?

パーキンソン病になると、「運動量が減るから太りやすくなるのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、パーキンソン病だからといって、必ずしも体重が増えるわけではありません。

実際には、運動量や食生活、薬物療法などの影響で体重が増える人がいる一方、病気の進行や嚥下機能の低下、振戦などによるエネルギー消費の増加によって、体重が減少する人もいます。

そのため、パーキンソン病の体重管理では「太る・痩せる」という数字だけを見るのではなく、身体活動量や筋肉量、食事摂取量、服薬状況などを総合的に考えることが重要です。

本記事では、パーキンソン病と体重変化の関係について詳しく解説します。

目次

パーキンソン病と体重変化の関係

パーキンソン病だから必ず太るわけではない

パーキンソン病は、脳内のドパミン神経が徐々に減少することで、動作緩慢、筋強剛、振戦、姿勢保持障害などの症状が現れる神経変性疾患です。

こうした運動症状によって身体活動量が低下すると、1日のエネルギー消費量が少なくなり、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ることで体重が増える可能性があります。

一方で、パーキンソン病では体重減少がみられることも珍しくありません。

つまり、「パーキンソン病=太りやすい病気」と単純に考えるのではなく、症状や治療、生活環境によって体重の変化が異なると理解することが大切です。

体重が増える人と減る人の両方がいる

パーキンソン病患者の体重変化には、大きな個人差があります。

例えば、発症後に外出や運動の機会が減少しても食事量が変わらなければ、体重は増加しやすくなります。また、薬物療法による食欲や行動の変化が関係する場合もあります。

反対に、振戦によるエネルギー消費の増加、食欲低下、嚥下障害、便秘などが重なると、十分な栄養を摂取できず体重が減少することがあります。

重要なのは体重そのものだけではありません。筋肉量が低下し、脂肪量が増える「サルコペニア肥満」のような身体組成の変化が起こることもあるため、体重だけで健康状態を判断しないことが重要です。

病気の進行段階によって体重変化は異なる

パーキンソン病の体重変化は、病気の進行段階によっても異なります。

比較的初期には運動量の減少や生活習慣の変化によって体重が増えるケースがあります。一方、病気が進行すると、動作そのものに必要なエネルギーが増えたり、食事動作や嚥下が難しくなったりすることで、体重が減少する可能性があります。

また、薬の効果が切れて身体を動かしにくくなる「オフ時間」が増えると、食事の準備や摂取そのものが負担となる場合もあります。

そのため、体重は一時点だけではなく、数か月単位で変化を確認することが大切です。

パーキンソン病で太りやすくなる原因

運動量の低下による消費エネルギーの減少

パーキンソン病では、動作緩慢や筋強剛、バランス能力の低下などにより、日常生活で身体を動かす機会が減少することがあります。

外出を控えるようになったり、歩行距離が短くなったりすると、1日の総エネルギー消費量は低下します。

それまでと同じ量の食事を続けている場合、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回りやすくなり、徐々に体重が増加する可能性があります。

特に、症状への不安から必要以上に活動を避けてしまうと、体力や筋力が低下し、さらに動かなくなるという悪循環につながることがあります。

筋力低下や活動範囲の縮小による影響

パーキンソン病では、疾患そのものだけではなく、身体活動量の低下による廃用によって筋力や筋肉量が低下することがあります。

筋肉量が減少すると、日常生活で消費されるエネルギー量も低下しやすくなります。

さらに、歩行速度の低下や転倒への不安から活動範囲が狭くなることで、外出や運動の機会が減り、身体活動量がさらに低下する可能性があります。

体重が大きく変わっていなくても、筋肉が減少して脂肪が増えている場合もあるため、体重だけではなく身体機能にも注目することが重要です。

食生活や間食の変化による影響

活動量が低下しているにもかかわらず、食事量や間食量が以前と変わっていなければ、体重は増加しやすくなります。

また、外出機会が減って自宅で過ごす時間が長くなることで、間食の回数が増えることもあります。

特に菓子類や甘い飲料などは、少量でもエネルギー量が高いものが多いため注意が必要です。

ただし、必要以上に食事を制限すると筋肉量や栄養状態の低下につながる可能性があります。単純なカロリー制限ではなく、身体活動量と栄養状態のバランスを考えることが大切です。

薬物療法によって食欲が変化することがある

パーキンソン病の治療では、レボドパ製剤やドパミンアゴニストなどが使用されます。

これらの治療によって運動症状が改善すると、食事がしやすくなったり、生活パターンが変化したりすることで体重が変化することがあります。

また、ドパミンアゴニストでは、一部の患者に衝動制御障害がみられることがあり、その一つとして過食が問題となる場合があります。

治療開始後に食欲や食行動が大きく変化した場合には、本人の意思だけの問題と考えず、主治医に相談することが重要です。

パーキンソン病の治療と体重増加の関係

ドパミン補充療法と体重変化

レボドパなどのドパミン補充療法は、動作緩慢や筋強剛などの運動症状を改善するために重要な治療です。

治療によって身体を動かしやすくなると活動量が増える場合がありますが、一方で食事動作が改善して食事摂取量が増える場合もあります。

さらに、治療によって振戦や筋緊張が軽減すると、それまで過剰に消費していたエネルギーが減少し、体重が増えることも考えられます。

そのため、薬物療法開始後の体重変化は、薬そのものだけではなく、症状改善に伴う生活全体の変化を含めて評価する必要があります。

ドパミンアゴニストによる食行動への影響

ドパミンアゴニストは、脳内のドパミン受容体を刺激することでパーキンソン病の症状を改善する薬剤です。

一方、一部では衝動制御障害が副作用としてみられることがあります。

衝動制御障害では、ギャンブルや買い物などの行動だけではなく、食べる行動を抑えにくくなる「過食」がみられる場合があります。

「急に食べる量が増えた」「甘いものを頻繁に食べるようになった」などの変化がみられる場合には、本人を責めるのではなく、薬剤の影響も含めて医療機関へ相談することが重要です。

DBS(脳深部刺激療法)後に体重が増えることがある

進行したパーキンソン病では、脳深部刺激療法(DBS)が行われることがあります。

DBS後には、運動症状や振戦が軽減することで、それまで身体活動や不随意運動によって消費されていたエネルギー量が変化することがあります。

その結果、食事量が大きく変わっていなくても体重が増加することがあります。

DBS後の体重増加については、単純な食べ過ぎだけで説明できるものではありません。治療による運動症状や代謝、食行動などの変化を総合的に考える必要があります。

パーキンソン病では痩せることもある

振戦や筋緊張によるエネルギー消費の増加

パーキンソン病では、安静時振戦や筋強剛などによって、本人が意識していなくても身体が持続的に活動している状態になることがあります。

そのため、身体活動量が少なく見えても、エネルギー消費量が増加している場合があります。

特に振戦や不随意運動が強い場合には、摂取しているエネルギーよりも消費エネルギーが多くなり、体重減少につながる可能性があります。

嚥下障害による食事摂取量の低下

パーキンソン病が進行すると、口や舌、咽頭周囲の筋肉をスムーズに動かしにくくなり、嚥下障害がみられることがあります。

食事に時間がかかる、むせる、飲み込みにくいといった症状が続くと、食事そのものが負担となり、摂取量が減少することがあります。

さらに、誤嚥を恐れて食べる量を減らしてしまうケースもあります。

体重減少と嚥下症状が同時にみられる場合には、医師だけではなく、言語聴覚士や管理栄養士などを含めた多職種による評価が重要です。

嗅覚や味覚の変化による食欲低下

パーキンソン病では、運動症状が現れる以前から嗅覚低下がみられることがあります。

食事のおいしさには嗅覚が大きく関係しているため、匂いを感じにくくなることで食事への楽しみが低下し、食欲が落ちる可能性があります。

また、加齢や薬剤、口腔内環境などの影響が重なることで、味の感じ方が変化するケースもあります。

「最近食事がおいしく感じない」という訴えも、栄養状態を考えるうえでは重要な情報となります。

便秘や消化器症状が食事量に影響する

便秘はパーキンソン病で比較的よくみられる非運動症状の一つです。

便秘が続くと腹部膨満感や食欲低下を感じやすくなり、1回あたりの食事量が減少することがあります。

また、自律神経機能の変化によって消化管の動きが低下している場合もあります。

食事量だけに注目するのではなく、排便状況や腹部症状なども含めて確認することが重要です。

病気の進行に伴って低栄養になることもある

パーキンソン病が進行すると、嚥下障害、食事動作の困難、食欲低下、消化器症状など複数の問題が重なり、低栄養状態になる可能性があります。

低栄養によって筋肉量が減少すると、歩行能力やバランス能力、日常生活動作がさらに低下する可能性があります。

また、筋肉量の減少は転倒やフレイル、サルコペニアのリスクにも関係します。

意図していない体重減少が続いている場合には、「痩せてよかった」と考えず、その原因を確認することが重要です。

体重増加がパーキンソン病に与える影響

肥満によって身体活動がさらに低下する可能性がある

体重が増えすぎると、立ち上がりや歩行、階段昇降などに必要な身体的負担が大きくなります。

もともと動作緩慢や姿勢保持障害がある人では、体重増加によって身体を動かすことがさらに大変になり、活動量が低下する可能性があります。

活動量が減少すると筋力や持久力も低下し、「動きにくいから動かない、動かないからさらに動きにくくなる」という悪循環につながります。

そのため、単純に体重を減らすことだけを目標にするのではなく、日常生活の中で無理なく身体活動を維持することが重要です。

膝や腰などの関節に負担がかかりやすくなる

体重の増加は、膝関節や股関節、腰部などの荷重部位への負担を増加させます。

パーキンソン病によって歩幅が小さくなったり、姿勢が前傾したりすると、もともと特定の筋肉や関節へ負担が集中している場合があります。

そこに体重増加が加わると、膝痛や腰痛などをきっかけとしてさらに活動量が低下する可能性があります。

パーキンソン病の体重管理では、神経症状だけではなく、整形外科的な身体機能にも目を向けることが大切です。

生活習慣病のリスクにも注意する

過度な体重増加は、パーキンソン病の有無にかかわらず、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病と関係します。

こうした疾患が重なることで、心血管疾患など別の健康リスクが高まる可能性があります。

ただし、高齢のパーキンソン病患者では、過度な減量によって筋肉量や栄養状態を悪化させることにも注意が必要です。

適正な体重は年齢や病状、筋肉量によって異なるため、BMIだけで一律に判断するのではなく、身体機能や栄養状態を含めた評価が必要です。

パーキンソン病の体重管理で大切なこと

定期的に体重の変化を確認する

パーキンソン病では、体重を定期的に測定し、長期的な変化を確認することが大切です。

数日程度の増減に一喜一憂するのではなく、数週間から数か月単位で変化を確認しましょう。

特に、食事や生活を大きく変えていないのに体重が急激に増減している場合には、病状や薬剤、栄養状態などが関係している可能性があります。

体重だけでなく、食事量、活動量、排便状況、嚥下状態なども一緒に記録しておくと、医療機関へ相談する際に役立ちます。

筋肉量を維持するために適度な運動を行う

パーキンソン病では、体重管理だけでなく筋肉量や身体機能を維持することが重要です。

ウォーキングなどの有酸素運動に加え、下肢や体幹を中心とした筋力トレーニング、バランス練習などを取り入れることで、日常生活で必要な身体機能の維持につながります。

ただし、症状や転倒リスクには個人差があります。

安全に運動を行うためにも、必要に応じて医師や理学療法士などの専門職に相談し、自分の身体機能に適した運動を選択しましょう。

栄養バランスを意識した食事を心がける

体重増加を防ぐために極端に食事量を減らすことはおすすめできません。

特に高齢者では、食事制限によってタンパク質やエネルギーが不足すると、筋肉量が減少し、サルコペニアにつながる可能性があります。

主食、主菜、副菜を基本として、十分なタンパク質やビタミン、ミネラルなどを摂取することが重要です。

なお、レボドパを服用している人では、タンパク質の摂取タイミングが薬の吸収に影響することがあります。自己判断で食事を制限せず、必要に応じて主治医や管理栄養士に相談しましょう。

急激な体重変化がある場合は医療機関へ相談する

短期間で体重が大きく増減した場合には、生活習慣だけが原因とは限りません。

嚥下障害、消化器症状、薬剤の影響、抑うつ症状、その他の疾患などが隠れている可能性もあります。

特に、意図しない体重減少や食欲低下が続いている場合には注意が必要です。

体重変化をパーキンソン病の症状の一つとして捉え、早めに医療機関へ相談することが重要です。

まとめ

パーキンソン病は「必ず太りやすくなる病気」ではありません。

運動量の低下や食生活の変化、薬物療法などによって体重が増える人がいる一方で、振戦によるエネルギー消費の増加や嚥下障害、食欲低下、消化器症状などによって体重が減少する人もいます。

特に病気が進行すると、低栄養や筋肉量の減少が問題となることもあるため、単純に「痩せた方が健康」と考えることには注意が必要です。

大切なのは、体重の数字だけを見るのではなく、筋肉量、身体活動量、食事摂取量、嚥下機能、服薬状況などを総合的に確認することです。

適度な運動とバランスのよい食事を基本としながら、急激な体重変化がみられた場合には、医師や理学療法士、管理栄養士、言語聴覚士などの専門職と連携し、その原因を確認していきましょう。

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