視床出血の急性期〜回復期リハ|端座位〜立位の5ステップと歩行介入の様子

目次

視床出血の急性期〜回復期リハ

視床出血のリハビリは「麻痺があるから筋力を上げる」だけではうまくいかないことが多いです。
理由はシンプルで、視床は感覚(深部感覚・足底感覚)や覚醒、注意の安定に深く関わるから。

つまり急性期は特に、“できるか”より“安全に再現できるか”が最優先になります。
ここでは、急性期の端座位〜立位の進め方を「5ステップ」に、回復期の歩行介入を「評価→仮説→介入→再評価」の要点に落として整理します。
みなさんの臨床に生かしてみてください。

急性期は「開始前のチェック」で安全が決まる

急性期の端座位・立位練習で怖いのは、訓練中に状態が変動することです。
視床出血は経時的な変化が出やすく、“さっき大丈夫だった”が通用しない場面があります。

だから開始前に、たった数分でいいので以下を確認します。

  • 意識・覚醒:呼名で開眼するか/1段階指示が通るか
  • バイタル:血圧・心拍・SpO₂・呼吸困難感
  • 神経所見の変化:麻痺増悪、瞳孔、頭痛・嘔吐、眠気の進行
  • 病態リスク:脳室穿破・水頭症・中脳進展(急変リスクの想定)

ここで大事なのは、判断基準が「できそう」ではなく、“安全にやれそう”であること。
変動が出たら迷わず中止し、チームで共有します。

視床出血の急性期:端座位〜立位の進め方(5ステップ)

ステップ1:ベッド上で“座れる準備”を作る

端座位が崩れる原因は、座位の筋力不足よりも「土台づくり不足」のことが多いです。
まずは“座る前”に、崩れにくい準備を作ります。

  • 頭頸部:過伸展を避け、軽く顎を引ける位置
  • 体幹:骨盤を正中へ(回旋・側屈を減らす)
  • 上肢:麻痺側上肢は牽引しない支持(肩痛予防)
  • 下肢:後で足底接地を作りやすい配置をイメージする
  • 声かけ:短く1つ(例「次、座ります」)

急性期は声かけが長いほど、覚醒が落ちたり緊張が上がったりします。
短く、ひとつが基本となります。

ステップ2:端座位へ移行(介助は“軸”を守る)

移行で起きやすいのは、過緊張、めまい、血圧変動。
ここは「起こす」より「段階を踏む」が正解です。

  • 回旋 → 側臥位 → 下肢下垂 → 端座位
  • 介助者は肩を引かず、骨盤と体幹の“ユニット”で操作
  • 端座位直後は10〜20秒静止し、反応を確認

観察するのは、顔色・発汗・ふらつき・SpO₂・訴え。
「不安が急に強くなる」のも、視床出血では見逃せないサインです。
また、この時期に雑な身体操作を行なってしまうと疼痛の誘発に起因してしまいます。

ステップ3:端座位の安定化(視床出血の核=感覚と覚醒)

端座位を筋力で頑張らせると、かえって崩れやすくなります。
視床出血の座位安定は、“入力で安定させる”が鍵です。

  • 足底接地を作る(踵〜前足部までそろえる)
  • 骨盤の前後傾を小さく誘導し、体幹を“起こす”
  • 麻痺側へは押し込まず“乗れる姿勢”を作る
  • 視覚依存が強いなら、ミラーで正中を確認→徐々に視覚キューを減らす

目安は「端座位30秒〜1分+軽い重心移動」が安全にできること。
“座れる”ではなく、“崩れずに座り直せる”が次のステップに進む条件です。

ステップ4:立ち上がり準備(再現性の設計)

立ち上がりでよくある失敗は「勢いで立つ」こと。
急性期は勢いではなく、再現性を作ります。

  • 足の位置:患側が引きすぎ/遠すぎを調整(接地の再現性優先)
  • 膝:崩れ・過伸展の兆候(必要なら膝前面サポート)
  • 体幹:前傾は腰から折れず、股関節から
  • 手:麻痺側上肢は引っ張らない(支持物や介助者の前腕で支える)

声かけはシンプルに
「足、床を感じて」「鼻をつま先の上に」
この2つだけでも立ち上がりが整うことがあります。

ステップ5:立位獲得→立位保持

急性期の立位保持は「長く立つ」ことが目的ではありません。
安全に立って“入力を得る”のが目的です。

  • 立位直後:血圧、めまい、顔色、反応性をチェック
  • 左右差:患側へ“乗れる位置”を探す
  • 小課題:数cmの前後左右重心移動、踵↔前足部の荷重感覚

そして重要なのが終わり方。
“成功しているうち”に終える
崩れてから終えると、次回に不安や過緊張を残しやすくなります。

中止基準(代表)

強いめまい/意識の落ち込み/血圧の大きな変動/SpO₂低下/新しい神経症状(麻痺増悪、激しい頭痛、嘔吐、瞳孔や眼位の変化)
このあたりが出たら、即中止→共有が鉄則です。

回復期の歩行介入は「評価→仮説→介入→再評価」で迷わない

回復期に入ると、歩行は“練習量”が増えます。
でも視床出血では、練習量を増やすだけだと転倒や代償の固定が起きやすい。

だからこそ、身体の個別性を捉えることが効きます。

① 評価:まず観察とテストで“崩れ方”を特定する

生活場面では
夜間トイレ、方向転換、段差、屋外
ここで崩れる人が多いです。

歩行観察は必要な条件

  • 初期接地の再現性(位置が毎回同じか/踵が入るか)
  • 立脚中期の代償(体幹側屈、膝崩れor過伸展)
  • 推進(股関節伸展、足関節の使い方、歩幅左右差)
  • 方向転換で急に不安定になるか

さらに視床出血なら必須で

  • 深部感覚(位置覚)
  • 足底・荷重感覚の左右差
  • 視床痛の兆候(過敏、灼熱感、温冷異常)も押さえます。

② 仮説:「なぜ崩れるか」を複数→1つへ

仮説は複数立てるより、1つに絞る方が速いです。
外れたら次へ、でOK。

例:
「深部感覚低下で立脚中期の荷重が安定せず、体幹側屈代償が出る」
「膝が崩れるのは筋力不足ではなく、接地が再現できず足関節タイミングが乱れるため」
「方向転換で不安定なのは注意資源低下で視覚依存が破綻するため」

複数の仮説を立案して検証して、仮説の立案。とサイクルを早めて刻一刻と変化する身体へ適応します。

③ 介入:入力設計 → 課題練習 → 転移

視床出血の介入はまず入力をして。
荷重入力(床反力・関節圧縮)を感じられるポジションを作り、必要ならミラーや床マーカーなど外部FBを使います(ただし依存しすぎない)。

課題練習はターゲットを明確に。
立脚中期が狙いなら、片脚荷重→小さな重心移動→ステップ課題。
接地が狙いなら、歩幅固定→接地位置をマーカー化→速度は最後。

最後にADL動作へ落とし込む。
生活で崩れる条件(方向転換、狭路、段差、停止→開始)を入れます。
二重課題は“軽く”から、疲労条件も最後に短時間だけ入れ、再現性を確認します。

④ 再評価:その場で判定できる指標を1〜2個

介入前に決めておくべきは「判定指標」。
ここを決めないと、介入が“やりっぱなし”になります。

例:

  • 立脚中期の体幹側屈の減少(見た目でもOK)
  • 接地位置のブレ(マーカーから外れる回数)
  • 10m歩行の安全性(ふらつき・介助量・停止回数)
  • 方向転換での破綻が出るか

改善したら難度を1段階上げる。
変わらないなら、仮説が違うか入力不足。
すぐ仮説を切り替えます。

まとめ:視床出血は「感覚×覚醒×再現性」で組み立てる

視床出血のリハは「麻痺があるから筋力強化」という発想だけだと詰まりやすいです。視床は感覚(深部感覚・足底感覚)や覚醒・注意の安定に関わるため、急性期ほど「できるか」より“安全に再現できるか”が大事になります。

急性期の臨床では、昨日は端座位が安定していたのに今日は反応が鈍い、顔色が悪い──そんな“揺れ”が起きます。だからこそ、開始前は意識・バイタル・神経所見の変化・病態リスクを短時間で確認し、「やれそう」ではなく「安全にやれる」状態かで判断します。

回復期の歩行は練習量を増やす前に、崩れる理由を特定します。直線は歩けるのに方向転換で崩れる、夜間トイレでふらつく──視床出血では感覚のズレや注意資源の不足が背景にあることが多いです。だから「評価→仮説→介入→再評価」を型にして、仮説は1つに絞って検証し、外れたら切り替える。介入は入力→課題練習→生活への移行の順に組むと、歩行練習が“反復”から“変化を起こす練習”になります。

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