頭部外傷の種類について

頭部外傷は、外部からの力が頭部に加わることで発生する損傷の総称であり、軽微な打撲から生命危機に関わる脳損傷まで幅広い病態を含みます。そのため、単に「頭を打った」という事実だけでは、その重症度や病態を十分に判断することはできません。臨床現場では、外力の作用機序や画像診断、症候の推移を総合して評価を行う必要があります。本項では、頭部外傷を理解するうえで重要となる「発生機序」「病態」「重症度評価」の三本柱に沿って解説し、病態生理に基づいた理解を深めることを目的とします。

目次

頭部外傷の概要

頭部外傷は、頭皮、頭蓋骨、脳実質、脳血管、神経系に至るまで多層的な損傷を生じ得る複合的な病態です。損傷は大きく一次損傷と二次損傷に区分されます。一次損傷とは受傷直後に生じる物理的損傷(脳挫傷や骨折など)を指します。一方、二次損傷とは、受傷後に脳浮腫・頭蓋内圧亢進・脳灌流圧低下・代謝異常などによって段階的に悪化する過程であり、この進行をいかに防ぐかが集中治療における要点となります。症状の変動は時間経過とともに発現・悪化する可能性があるため、受傷直後の状態だけで軽症と判断することは危険です。

外傷の発生機序による分類

頭部外傷の評価にあたり、どのような力が加わったかを解剖学的・力学的に推定することは、損傷形態の理解と治療方針の決定において重要です。

直達外力による外傷

直達外力は、頭部に直接衝撃が加わることで生じる損傷です。転倒して頭部を床に衝突させる、ボールが頭部に直撃する、硬い物体に頭をぶつけるといった場面が典型例です。この場合、衝撃部位周囲に損傷が限局することが多く、頭蓋骨骨折・皮下血腫・脳挫傷などが発生します。ただし、局所的な衝撃であっても、その反対側に「対側性挫傷(coup-contrecoup injury)」を生じることがあり、外力が作用した部位だけを注目するのでは不十分です。

局所損傷の特徴

局所損傷では、打撃部位に一致した皮下出血、腫脹、裂創が確認されることが多く、CT画像などで損傷部位が明瞭に描出されやすい特徴があります。特に側頭部は骨が薄く、中硬膜動脈が近接するため、骨折に伴う急性硬膜外血腫のリスクが高い点は臨床的に重要です。また、局所所見が軽度であっても脳内では血腫や浮腫が進行する場合があるため、経時的な神経学的評価が不可欠です。

介達外力による外傷

介達外力は、頭部以外に加わった外力が頭蓋内へ伝達され、それによって脳に損傷が生じる病態を指します。顎や体幹への強い衝撃が脳へ回転力として作用し、脳が頭蓋内で揺さぶられるような状況が典型的です。この場合、局所的ではなく脳全体にストレスがかかり、びまん性軸索損傷に代表される広範的な神経線維損傷が発生しやすいとされています。

広範な脳損傷の特徴

介達外力による損傷は、意識障害が強いにもかかわらず、当初の画像検査で明確な異常所見が得られない場合が少なくありません。これは白質線維の微細な損傷が主病態であるためです。特に、自動車事故やスポーツ競技中の衝突といった高速回転加速度のかかる場面に多く、予後不良となるケースも多い点が特徴です。

病態による分類

脳震盪(Concussion)

脳震盪は、外力によって一過性の神経生理学的機能障害を来す状態です。脳構造そのものに明らかな損傷は認めないことが多いものの、意識消失、健忘、頭痛、めまい、感情変動など多様な症状を呈します。特にスポーツ現場では復帰判断が重要となり、不適切な早期復帰はセカンドインパクトシンドロームを招き、致命的な脳浮腫を引き起こす可能性があります。症状消失後も段階的な運動復帰プロトコルに沿うことが推奨されます。

脳挫傷(Contusion)

脳挫傷は脳実質内に明確な組織損傷と出血を伴う外傷性脳損傷であり、前頭葉および側頭葉に好発します。局所の腫脹により頭蓋内圧が上昇し、意識状態の悪化、痙攣発作、人格変化、認知障害、運動麻痺など多様な神経症状が出現します。受傷後は画像評価と頭蓋内圧管理が中心となり、必要に応じて外科的減圧術や血腫除去が検討されます。

急性硬膜外血腫(EDH)

急性硬膜外血腫は、主に中硬膜動脈の損傷によって硬膜と頭蓋骨の間に血腫が急速に形成される病態です。典型的には、受傷直後に意識消失→一時覚醒→再び意識低下という「ルシッドインターバル」を呈します。血腫は比較的速く増大するため、迅速な診断と外科的血腫除去が救命に直結します。

急性硬膜下血腫(SDH)

急性硬膜下血腫は、架橋静脈などが破綻し、硬膜と脳表の間に血腫が生じる病態です。特に高齢者では脳萎縮に伴い静脈が伸展しているため、軽微な外傷でも血腫が発生することがあります。症状は時間経過とともに進行し、意識障害、片麻痺、瞳孔異常などが認められます。治療は血腫量と臨床症状に応じて外科的介入を検討します。

びまん性軸索損傷(DAI)

びまん性軸索損傷は、強い回転加速度により脳白質線維がせん断されることで発生します。意識障害が重度かつ長期化することが多く、MRIで白質部に点状の高信号が認められることがあります。多くの症例で長期的なリハビリテーションが必要となり、予後不良となる可能性が高いため、早期から多職種での包括的サポートが求められます。

重症度分類

GCS(Glasgow Coma Scale)による評価

GCSは「開眼」「言語反応」「運動反応」の3項目に基づき意識レベルを数値化する評価法で、頭部外傷の重症度分類と治療指針決定の中心となります。軽症(13〜15点)、中等症(9〜12点)、重症(8点以下)に区分され、救急現場における初期対応や搬送先の判断に大きく関わります。経時的な変化を追うことが病態悪化の早期発見に重要です。

画像評価による重症度判定

CTは急性期の頭蓋内出血・骨折・脳浮腫の把握に有用であり、緊急評価の第一選択です。一方、MRIは白質や細微な脳損傷を捉えることに優れ、特にびまん性損傷の診断において重要な役割を果たします。臨床症状と画像所見が一致しない場合も多いため、神経所見の連続評価と画像診断を組み合わせた総合判断が必要です。

まとめ

頭部外傷は、一見軽症に見える場合でも、内部では命に関わる病態が進行している可能性があります。「外力の作用機序」「病態の理解」「重症度評価」を統合して判断することが、適切な対応と予後の改善に直結します。また、受傷後の経時的な状態変化を観察し、必要な場合には速やかな医療介入を行うことが極めて重要です。臨床においては、詳細な問診、的確な神経学的評価、適切な画像検査、そしてその後の管理計画までを一貫して行うことが求められます。

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