胸郭出口症候群(Thoracic Outlet Syndrome)は、首から腕にかけて神経や血管が圧迫されることによって起こる症状の総称です。多くの人にとって、肩こりや手のしびれが軽い不調として片付けられることがありますが、進行すると日常生活や仕事に深刻な影響を与える可能性があります。本記事では、胸郭出口症候群の定義や原因、症状、診断方法、治療法、予防策について解説します。
胸郭出口症候群の概要
胸郭出口症候群の定義
胸郭出口症候群とは、鎖骨、第一肋骨、肩甲帯の間にある胸郭出口部で、腕神経叢や鎖骨下動脈・静脈が圧迫されることで起こる症候群です。この部位の構造は非常に狭く、姿勢の崩れや筋肉の異常緊張が原因となり、症状を引き起こします。特にデスクワークや運動不足が要因になることが多く、現代人にとって身近な疾患と言えます。
胸郭出口症候群の原因
胸郭出口症候群の原因は主に2つの要因から成ります。
解剖学的要因
先天的な異常や解剖学的な特徴が胸郭出口を狭め、神経や血管に負担をかけます。例えば、頚肋(けいろく)や第一肋骨の形態異常、過剰な筋肉の発達(例:斜角筋)が挙げられます。
姿勢や生活習慣の影
長時間のデスクワークやスマートフォンの操作による前傾姿勢、反復的な作業、または重い荷物を持つ習慣が胸郭出口の負担を増大させます。特に、猫背やストレートネックは胸郭出口症候群の発症に深く関与しています。
胸郭出口症候群の症状と診断
主な症状
胸郭出口症候群では、神経性症状と血管性症状が現れます。
神経性症状
最も多い症状で、腕神経叢が圧迫されることで発生します。腕や指先に現れるしびれや痛み、握力低下、夜間に症状が悪化することが特徴です。特に、肩から小指側の痛みが続く場合は神経性の可能性が高いです。
血管性症状
鎖骨下動脈や静脈が圧迫されると、血液の流れが妨げられ、腕の冷感や蒼白、場合によっては腫れが見られます。動脈の圧迫が強い場合には、手指が紫色に変色することもあります。
診断方法
胸郭出口症候群を診断するためには、症状を正確に評価し、特定の検査を行う必要があります。
理学療法検査
患者の姿勢や特定の動作で症状を再現するアドソンテストやライトテストが行われます。これらの検査により、圧迫部位を特定できます。
画像検査
X線やMRI、超音波検査が使用されます。MRIでは、神経や血管がどのように圧迫されているかを詳細に評価でき、超音波では血流の遮断状況をリアルタイムで確認することが可能です。
胸郭出口症候群の治療
保存療法
治療の第一選択肢は保存療法です。これは、症状の軽減と胸郭出口への負担を軽くすることを目的としています。
姿勢の改善
正しい姿勢の維持が最も重要です。猫背や前傾姿勢を改善し、肩甲帯を安定させるエクササイズやストレッチを行うことで、胸郭出口への圧迫を減らします。
理学療法と運動療法
専門の理学療法士の指導の下で、肩甲帯や頚部の筋肉をほぐす施術や、筋力トレーニングを行います。特に、胸郭出口を広げるストレッチは非常に効果的です。
手術療法
保存療法で症状が改善しない場合には、手術療法が検討されます。手術では、圧迫を引き起こしている第一肋骨の切除や筋肉の緊張を解放する処置が行われます。術後には適切なリハビリが必要で、長期的な症状管理を目指します。
胸郭出口症候群の予防
姿勢改善の重要性
胸郭出口症候群の発症を防ぐには、普段の姿勢が鍵となります。デスクワークをする際には、椅子や机の高さを適切に調整し、肩甲骨を引き締める意識を持つことが重要です。また、1時間に1回程度のストレッチを取り入れましょう。
筋力バランスの維持
予防のためには、肩甲帯や背中の筋肉を鍛えることが効果的です。特に、インナーマッスルの強化は肩周囲の安定性を向上させ、胸郭出口への負担を減少させます。ただし、過剰な運動は逆効果になる可能性があるため、専門家の指導を受けることを推奨します。
まとめ
胸郭出口症候群は、日常生活の些細な要因が積み重なり発症する疾患です。早期の診断と適切な治療によって、症状の進行を防ぐことが可能です。また、正しい姿勢や適切なエクササイズの習慣化により、発症リスクを大幅に低減することができます。症状が気になる場合は、専門医や理学療法士に早めに相談し、適切なケアを受けることをお勧めします。
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