骨挫傷とは

骨挫傷(こつざしょう)は、スポーツ外傷や転倒後の痛みの原因として近年注目されるようになった病態です。
レントゲン検査では異常が見られないにもかかわらず、強い痛みや違和感が持続するケースも多く、臨床現場では「原因がはっきりしない痛み」として扱われてきました。

しかし、MRIの普及により、骨の内部で起きている微細な損傷が可視化されるようになり、「骨挫傷」という概念が明確になっています。ここでは、骨挫傷の定義から発生メカニズム、症状、診断、治療、そして予後までを専門的に解説します。

目次

骨挫傷の基本的な定義

骨挫傷と骨折の違い

骨挫傷とは、強い外力が加わった際に骨の内部、特に海綿骨に微細な損傷が生じた状態を指します。
骨折のように骨皮質の連続性が失われることはなく、構造的な破綻は最小限にとどまる点が特徴です。

一方、骨折では骨皮質の断裂が生じ、X線画像でも明確な異常が確認できます。
骨挫傷は「骨折未満だが正常でもない状態」であり、機能的には大きな影響を及ぼす可能性がある病態です。

骨の内部で起きている変化

骨挫傷では、骨梁の微細な圧潰や損傷により、骨髄内出血や浮腫が発生します。
この骨髄浮腫が骨内圧の上昇や炎症反応を引き起こし、深部に響くような痛みの原因となります。

外見上の変化が乏しくても、骨内部では回復に時間を要する損傷が進行している点が重要です。

骨挫傷が起こるメカニズム

外傷による骨への衝撃

骨挫傷の多くは、転倒や衝突、ジャンプ着地といった瞬間的な強い外力によって生じます。
関節を介して伝わった衝撃が、骨端部や関節近傍の海綿骨に集中することで発生します。

骨自体の強度は保たれていても、衝撃エネルギーを吸収しきれなかった結果として、内部構造に損傷が生じます。

スポーツ動作や転倒との関係

急停止、方向転換、ジャンプ動作を伴うスポーツでは、骨挫傷のリスクが高まります。
非接触型外傷として生じるケースも多く、明確な外傷歴がないまま発症することもあります。

また、高齢者では骨密度低下やバランス能力の低下により、軽微な転倒でも骨挫傷が起こりやすくなります。

関節内での圧縮ストレス

骨挫傷は単発の外傷だけでなく、繰り返される関節内圧縮ストレスによっても発生します。
過剰な荷重が持続的にかかることで、骨梁構造が徐々に損傷していきます。

膝・足関節・股関節に多い理由

膝関節では大腿骨と脛骨の衝突、足関節では距骨への荷重集中、股関節では寛骨臼と大腿骨頭の圧縮が起こりやすく、骨挫傷の好発部位となります。

特に膝では、靱帯損傷や半月板損傷と同時に骨挫傷が確認されることも多く、外傷評価では注意が必要です。

骨挫傷の主な症状

痛みの特徴

骨挫傷の痛みは、局所的でありながら深部に響くような鈍痛として訴えられることが多いです。
圧痛が明確で、荷重や衝撃によって症状が増悪する傾向があります。

動作時痛と安静時痛の違い

初期には荷重時や特定動作時のみ痛みが出現しますが、炎症が持続すると安静時にも痛みや違和感が残るようになります。
この変化は、骨内炎症が慢性化しているサインと捉える必要があります。

腫れや違和感の出現

表在的な腫脹や皮下出血は目立たないことが多い一方で、「中が腫れている感じ」「重だるさ」といった主観的症状が特徴的です。

レントゲンで写らない理由

骨挫傷は骨皮質の破綻を伴わないため、X線検査では異常所見が確認できません。
そのため、症状と画像所見が一致せず、適切な対応が遅れることがあります。

骨挫傷の診断方法

画像検査の種類

骨挫傷の診断にはMRIが最も有用とされています。
骨髄内の浮腫や出血を直接評価できる点が大きな特徴です。

MRIが有用とされる理由

MRIでは、T2強調像や脂肪抑制画像で骨髄浮腫が高信号として描出されます。
また、靱帯や軟骨、半月板などの合併損傷を同時に評価できるため、総合的な病態把握が可能です。

臨床所見からの判断

画像検査だけでなく、理学所見や動作分析も診断において重要な要素となります。

問診と理学所見の重要性

受傷機転、痛みの出現時期、荷重との関連性を詳細に把握することで、骨挫傷を疑う根拠が明確になります。
局所圧痛や荷重時痛の再現性は、重要な臨床所見です。

骨挫傷の治療と対応

保存療法が基本となる理由

骨挫傷の治療は、原則として保存療法が選択されます。
骨折と異なり、手術や強固な固定を必要とするケースは稀です。

安静・荷重制限の考え方

症状の程度に応じて、免荷や部分荷重を行い、骨内炎症の沈静化を最優先とします。
痛みを我慢して動かし続けることは、回復を遅らせる要因となります。

リハビリテーションの役割

疼痛が軽減した後は、段階的なリハビリテーションが重要となります。

動作再教育と再発予防

関節可動域、筋力、動作パターンを評価し、再発につながる負荷の偏りを修正します。
特にスポーツ復帰を目指す場合は、競技特性を考慮した動作再教育が不可欠です。

骨挫傷の予後と注意点

回復までにかかる期間

骨挫傷の回復には数週間から数か月を要することが一般的です。
損傷範囲が広い場合や荷重部位では、回復までに長期間を要することもあります。

症状が長引くケースの特徴

早期からの過負荷、適切な安静が取れなかった場合、骨髄浮腫が遷延し、慢性的な痛みにつながることがあります。

放置した場合のリスク

骨挫傷を軽視して放置すると、症状の慢性化や二次的な関節障害を引き起こす可能性があります。

慢性痛や二次障害との関連

骨挫傷に伴う疼痛回避動作が続くことで、関節アライメントの破綻や周囲組織への過負荷が生じ、別の障害を誘発することがあります。

まとめ

骨挫傷は、レントゲンでは見逃されやすいものの、骨内部では確実に損傷が生じている重要な病態です。
適切な診断と負荷管理、段階的なリハビリテーションを行うことで、多くは良好な経過をたどります。

原因不明の痛みが続く場合には、骨挫傷の可能性を視野に入れ、早期対応を心がけることが重要です。

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