褥瘡ケアの基本:脳卒中後の寝たきりを予防する方法

褥瘡(じょくそう)は、寝たきりの患者にとって避けて通れない健康問題の一つです。特に脳卒中後の患者は、麻痺や感覚障害により自力での体位変換が難しく、褥瘡が発生するリスクが高まります。褥瘡は患者の生活の質(QOL)を著しく低下させるだけでなく、治療が遅れると生命に関わる合併症を引き起こす可能性があります。本記事では、褥瘡の基本的な知識、予防の具体的な方法、発生時の対応策について解説します。

目次

はじめに

褥瘡とは何か

褥瘡は、局所に継続的な圧迫がかかり、血流が遮断されることで皮膚や組織が壊死する疾患です。初期段階では皮膚の発赤や硬化がみられますが、適切なケアを怠ると、皮膚が崩壊し深部の筋肉や骨にまで影響を及ぼすことがあります。特に仙骨部や坐骨部、大転子部、踵などの骨突出部はリスクが高い部位です。

褥瘡の発生率は病院や介護施設で高く、入院患者の約8〜10%が褥瘡を経験するとされています。これらの患者の多くが、高齢者や脳卒中後の麻痺患者であり、ケアの重要性が改めて浮き彫りになります。

脳卒中患者における褥瘡のリスク

脳卒中患者では、麻痺や感覚障害、意識レベルの低下が褥瘡リスクを高める主な要因です。特に、片麻痺患者では健側の動きに依存しがちであり、麻痺側に体重が集中することで圧迫部位が固定されやすくなります。また、嚥下障害や食欲低下による栄養不良、脱水も褥瘡の発生を助長します。

さらに、脳卒中後の患者は痛みや不快感を訴えにくい場合があり、介護者が異常に気づくまで時間がかかることが多いです。このような状況では、医療者や介護者の細心の注意と早期介入が必要不可欠です

褥瘡予防の重要性

褥瘡の予防は、治療よりも遥かに簡単かつ効率的です。褥瘡が発生すると、患者の精神的・身体的な苦痛が増すだけでなく、感染症や敗血症など生命を脅かす合併症を引き起こす可能性があります。また、治療には多大な時間と費用がかかるため、日常的な予防対策が患者と介護者双方の負担を軽減する最良の方法と言えます。

褥瘡予防の基礎知識

体圧分散の原則

姿勢管理の重要性

体圧分散は褥瘡予防の基本です。長時間同じ姿勢でいると、骨突出部に圧力が集中し、局所の血流が阻害されます。適切な姿勢管理により、体重を均等に分散させることが可能になります

30°側臥位を推奨する理由として、仙骨部や坐骨部の圧迫を軽減できる点が挙げられます。また、ベッドの高さや角度を調整することで、患者が快適に過ごせる姿勢を保つことができます。具体的には、頭側を30°程度挙上し、肺機能の維持と胃食道逆流の防止を図りながら、下半身の圧力を分散することが推奨されます。

寝具の選び方

褥瘡予防のためには、適切な寝具の選択が不可欠です。エアマットレスや低反発ウレタンマットレスは、体圧分散に効果的であり、患者の状態に合わせて選ぶことが重要です。近年では、動的エアマットレスが褥瘡予防において特に有効とされており、圧力を定期的に変動させることで皮膚の血流を促進します。

また、ポジショニング用のクッションやパッドを併用することで、骨突出部への圧力をさらに軽減することができます。

スキンケアの基本

毎日の皮膚観察

皮膚の異常を早期に発見することは、褥瘡予防において最も重要なステップです。皮膚の発赤、硬化、湿潤、乾燥といった兆候を見逃さず、毎日観察する習慣をつけましょう。特に、麻痺側や体重がかかる部分は注意深くチェックする必要があります。

保湿と清潔の維持

乾燥した皮膚はバリア機能が低下し、外部からの刺激に弱くなります。適切な保湿剤を使用し、皮膚の水分量を維持することが大切です。同時に、排泄物や汗などが皮膚に長時間接触しないように清潔を保つことが、感染予防にもつながります。

実践的な褥瘡ケアの方法

姿勢変換とポジショニング

姿勢変換の頻度とタイミング

褥瘡予防のためには、2時間ごとに体位変換を行うことが推奨されています。ただし、患者の状態や使用する寝具によっては、頻度を調整する必要があります。体位変換時には、皮膚が引きずられたり摩擦が生じたりしないよう、スライディングシートを使用することが重要です。

クッションやマットの活用

褥瘡好発部位には、専用のポジショニングクッションを使用することで、圧力を軽減できます。例えば、膝下にクッションを入れることで、踵の圧迫を防ぐことが可能です。

栄養管理の役割

高タンパク質食の重要性

褥瘡の予防および治癒には、高タンパク質の摂取が不可欠です。タンパク質は、傷ついた組織を修復するための重要な栄養素であり、特にアルブミン値が低い場合は積極的な補給が求められます。

水分補給の徹底

皮膚の健康維持には適切な水分補給が必要です。脱水症状は皮膚の弾力性を低下させ、損傷を受けやすくします。患者が十分な水分を摂取できるよう、日常的に確認することが重要です。

リハビリテーションと運動

関節拘縮を防ぐ運動

運動療法は血流を改善し、褥瘡予防に効果的です。ベッド上での足首や膝の屈伸運動は、介助なしで実施できるため、患者の自主性を促す手段として有効です。

ベッド上運動の指導

患者個々の能力に応じた運動プログラムを提供することで、筋力低下を防ぎ、活動範囲を広げることが可能です。

まとめ

褥瘡ケアは、予防が最優先されるべき分野です。適切な体圧分散、スキンケア、栄養管理、リハビリテーションを組み合わせることで、褥瘡の発生を大幅に減少させることができます。今後は、より標準化されたケアプロトコルの普及や、患者・家族への教育を通じた褥瘡予防の意識向上が求められます。


ニューロプラスティー🧠リハビリ情報 より

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