膝を曲げる時のポキポキ音の正体とは?

膝を曲げたときに「ポキッ」「パキッ」と音が鳴る経験をしたことのある人は少なくありません。このような音は必ずしも異常を示すものではない一方で、膝関節に何らかの機能的・構造的問題が隠れているサインである可能性もあります。特にスポーツや日常生活において膝への負荷が高い方や、中高年で膝の痛みが気になる方にとって、この音の正体を正しく理解することは、障害の予防や早期発見に繋がります。この記事では、膝の構造から音が発生する原因、音の種類、病的な状態との見分け方について解説していきます。

目次

膝関節から音がするのはなぜ?

膝は人体最大の関節であり、荷重と可動性を両立するために非常に複雑な構造を持っています。関節内の骨・軟骨・半月板・靭帯・滑膜など多くの要素が連動して動く中で、わずかなズレや摩擦、圧力変化などが音を発生させます。音が出ること自体はよくある現象ですが、その背景にあるメカニズムを理解することで、異常の早期発見やリスク管理に繋がります。

正常な「ポキポキ音」と異常の見分け方

音の有無だけでなく、伴う症状の有無が大きな判断材料となります。痛み・腫れ・動作時の制限がなければ多くは生理的音であり、特に問題ありません。たとえば関節内の圧力変化により関節液中の気泡が破裂する「キャビテーション」は、音は大きくても病的ではありません。一方、同じ動作で何度も同じ部位から音が出たり、痛みや不安定性を感じたりする場合は、軟骨損傷や靭帯損傷などの構造的問題の可能性があります。

音の種類とその特徴:クリック音・クレピタス・クラッキング

膝関節から出る音は大きく3種類に分類できます。
クリック音:関節内の構造物(主に軟部組織)の引っかかりによる小さな音で、動作の途中や終末域で生じやすい。
クレピタス:軟骨が摩耗して骨同士が擦れ合うような「ザラザラ」「ゴリゴリ」とした連続音で、加齢や変性によって起こりやすい。
クラッキング音:突然の気泡破裂により発生する破裂音で、関節の急な開閉によって起こることが多く、一過性で痛みは伴わないのが一般的です。
これらの音を聴き分けることが、臨床判断やセルフチェックの大きな手がかりになります。

音が鳴るタイミングと動作から考えられる原因

「しゃがむとき」「立ち上がるとき」「階段昇降時」など、動作の中でも特定のフェーズで音が強調される場合は、力学的な摩擦や軟部組織の滑走障害が考えられます。たとえば膝蓋骨が大腿骨滑車上を滑走する際の軌道不良や、腸脛靭帯の張力増加によるスナッピング現象など、動作解析から得られる情報は非常に有用です。臨床では、どの動作・どの関節角度で音が鳴るかを詳細に問診・観察することが、鑑別に重要です。

関節内の構造と音の関係性

膝関節の「音」は、関節内の精緻な構造物同士の物理的な相互作用によって生じます。関節液の成分変化、軟骨の摩耗、半月板の損傷、滑膜の癒着など、さまざまな要因が関節運動時の音に影響を及ぼします。

関節気泡(キャビテーション)のメカニズム

関節包内の圧力が急激に変化することで、滑液中に溶け込んでいたガス(二酸化炭素や窒素など)が気泡となり、それが破裂することで「パキッ」と音が生じます。このキャビテーション現象は、無害なものとして知られ、関節可動域が広い人や筋緊張の低い人に多く見られる傾向があります。音は一過性で、一定時間内に繰り返し鳴ることは少ないのが特徴です。

半月板・靭帯・滑膜ヒダなどの構造的影響

半月板の部分断裂や変性によって「引っかかり」感とともに音が出ることがあります。また、滑膜ヒダ(特に内側滑膜ヒダ)は過形成や炎症によって肥厚し、大腿骨内側顆に接触することで「コツッ」としたクリック音を生じさせます。靭帯の微細損傷や緩みがある場合にも、異常な軌道運動が生じ、音の原因となります。これらは多くの場合、MRIや関節鏡による画像評価で明らかになります。

軟骨や関節液の状態による変化

関節軟骨の表面が摩耗すると、関節運動時に骨表面の凹凸が擦れ、摩擦音(クレピタス)が発生します。また、関節液の量や粘性が低下すると潤滑性が失われ、骨同士の滑りが悪くなり、異音の原因となることもあります。関節液は軟骨栄養にも関わっており、その質の劣化は変性の加速因子ともなります。

加齢や生活習慣による影響

膝の音は加齢現象として自然に起こる側面もありますが、生活習慣の積み重ねによって悪化させることもあるため、予防的視点が重要です。

加齢に伴う変化と音の発生頻度

40代以降になると関節軟骨の水分量が減少し、弾力性が失われていきます。その結果、荷重時の衝撃を吸収しきれず、摩擦音が出やすくなります。また、半月板や靭帯のコラーゲン線維も脆弱化し、微小な損傷を繰り返しやすくなります。これにより「音が鳴りやすい関節構造」が形成されていくのです。

筋力低下や柔軟性の低下がもたらす摩擦音

特に大腿四頭筋やハムストリングスの筋力低下は、膝蓋骨の動揺性や接触圧を増加させ、異常な音を助長します。また、筋膜や腱の柔軟性が低下すると、関節の運動軌道が乱れ、関節面に不均一なストレスがかかり、摩擦や引っかかりが生じやすくなります。筋力・柔軟性は膝音予防の2大要素といっても過言ではありません。

悪化を防ぐための日常生活での工夫

椅子の高さを調整して膝に無理な屈曲を強いない、正座やしゃがみこみを長時間避ける、膝に負担の少ない靴を選ぶなどの工夫が重要です。また、階段では下り動作に特に負荷がかかるため、手すりを使用する、脚を交互に出すなどの方法で衝撃を軽減できます。

痛みを伴う場合に考えるべき疾患

音に加えて「痛み」「熱感」「可動域制限」などの症状が伴う場合、何らかの疾患が背景にある可能性が高まります。これらのケースでは、正確な診断と適切な治療が必須です。

変形性膝関節症との関連

最も一般的な疾患が変形性膝関節症(OA)です。軟骨の摩耗と骨棘の形成により、関節が不整地化し、ゴリゴリとした音や不安定感、動作時痛が出現します。早期では音だけが唯一のサインであることもあるため、特に中高年者では注意が必要です。

半月板損傷や膝蓋軟骨軟化症の可能性

半月板損傷は、屈伸時の引っかかり感、クリック音、急な激痛を特徴とします。特にスポーツ選手や中高年に多く、加齢による自然損傷も含まれます。膝蓋軟骨軟化症(膝蓋大腿関節症)は、膝蓋骨裏側の軟骨が柔らかくなり、摩擦音や前膝痛を生じる状態で、階段昇降時や立ち上がり動作での痛みが特徴です。

整形外科受診のタイミングと目安

膝の音が長期間続く、または痛み・腫脹・熱感を伴う場合には、整形外科での診察が必要です。レントゲンやMRIによる画像評価を通じて、関節構造の異常を明らかにし、保存療法・薬物療法・注射療法・リハビリなど適切な対処が求められます。

対処法とセルフケアのポイント

膝の異音を完全に防ぐことは困難ですが、リスクを軽減し、悪化を防ぐ方法は数多く存在します。予防とケアの積み重ねが将来的な膝疾患の予防につながります。

ストレッチや筋トレによる予防と改善

膝蓋骨の軌道を安定させる大腿四頭筋、膝を支持するハムストリングス、膝内外側のバランスをとる内転筋群・外転筋群の強化が有効です。さらに、腸脛靭帯や膝窩部の筋膜ストレッチによって、関節運動時の滑走性を高めることができます。正しいフォームと段階的な負荷設定が成功の鍵となります。

膝関節に優しい生活習慣の見直し

過体重は膝関節への荷重を増やすため、体重管理は膝音予防にも重要です。また、冷えや湿気による関節の硬化を防ぐため、適度な保温や入浴習慣の見直しも勧められます。日常的な歩行やエクササイズにおいて、正しい足の着き方や姿勢の保持も大切です。

病院での検査・リハビリ・治療法の選択肢

整形外科では、関節内注射(ヒアルロン酸やステロイド)、リハビリテーション(筋トレ・可動域訓練・歩行訓練)、電気刺激療法など多様な選択肢があります。理学療法士による関節機能評価や動作分析を通じて、より個別性の高いプログラムを構築することで、症状の改善と再発予防が期待されます。

まとめ

膝を曲げたときの「ポキポキ音」は、単なる生理的現象であることもあれば、膝関節内の微細な異常や疾患の前兆である可能性も否定できません。その音がどのタイミングで、どのように鳴るのか、痛みや機能制限が伴うのかを観察することで、適切な判断が可能になります。早期発見・早期対応により、関節の健康を長く維持することができるため、日頃から膝のサインに敏感になり、積極的にセルフケアと医療機関のサポートを組み合わせていくことが大切です。膝の音を“気のせい”で済ませず、身体の声として受け止めましょう。


ニューロプラスティー🧠リハビリ情報 より

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