脳卒中と呼吸障害の関係性

脳卒中は運動機能や感覚機能に大きな影響を及ぼすだけでなく、呼吸機能にも深刻な影響を与えることがあります。特に重度の脳卒中では、中枢神経系の障害により呼吸調節が乱れ、低酸素状態や誤嚥性肺炎のリスクが高まります。本記事では、脳卒中が呼吸機能にどのように影響を及ぼすのかを詳しく解説し、臨床現場でのリハビリテーションの視点から対応策を考えていきます。

目次

脳卒中による呼吸機能への影響

脳卒中は脳の血流障害によって発生し、障害を受ける部位によってさまざまな症状を引き起こします。その影響は運動機能や認知機能にとどまらず、呼吸機能にも波及することが知られています。特に、延髄や橋といった呼吸調節を司る部位が障害されると、呼吸リズムの乱れや換気量の低下が生じる可能性があります。

脳卒中が呼吸に与える生理学的変化

脳卒中後の呼吸障害は、主に以下の生理学的変化によって引き起こされます。

  • 呼吸筋の麻痺:片麻痺の影響で呼吸筋の協調運動が乱れ、換気効率が低下する。
  • 中枢性の呼吸調節障害:呼吸中枢の障害により、呼吸のリズムや深さが変化する。
  • 交感神経・副交感神経のバランス異常:自律神経系の調節不全により、過剰換気や低換気が生じる。

中枢神経系と呼吸調節機能の関連

延髄には呼吸中枢があり、ここが障害されると生命維持に直接関わる重篤な呼吸不全を引き起こします。また、大脳皮質や小脳も間接的に呼吸調節に関与しており、それらの部位が損傷を受けると随意的な呼吸コントロールが困難になります。

病巣部位による呼吸障害の特徴

  • 脳幹部(延髄・橋):呼吸パターンの異常(チェーンストークス呼吸など)が出現しやすい。
  • 大脳皮質:呼吸リズムは保たれるが、嚥下障害による誤嚥のリスクが高まる。
  • 小脳・基底核:体幹の不安定性により、呼吸筋の協調性が低下する。

脳卒中後の呼吸障害の種類と症状

脳卒中後に発生する呼吸障害は、多岐にわたります。急性期では無呼吸や低換気が問題となり、慢性期では嚥下障害による誤嚥性肺炎が大きな課題となります。

無呼吸・低換気症候群

脳卒中後には睡眠時無呼吸症候群(SAS)の発症リスクが高まることが報告されています。これは、呼吸中枢の障害や上気道筋の機能低下によるものです。また、低換気症候群では、血中の二酸化炭素濃度が上昇し、意識レベルの低下を引き起こすこともあります。

呼吸パターンの異常(チェーンストークス呼吸など)

特に脳幹部の障害では、周期的な呼吸パターン異常(例:チェーンストークス呼吸)が見られます。このような異常呼吸は、呼吸中枢の制御機能の低下により発生し、酸素供給の不安定化を招きます。

嚥下障害と誤嚥性肺炎のリスク

脳卒中後の嚥下障害は、誤嚥性肺炎の主要な原因となります。特に、喉頭の挙上不全や咽頭残留の増加により、誤嚥が生じやすくなります。これにより、肺炎の発症率が上昇し、生命予後にも影響を与える可能性があります。

呼吸障害が及ぼす二次的影響

呼吸機能の低下は、全身の健康状態にも影響を及ぼします。脳卒中後の患者では、以下のような二次的な影響が問題となります。

低酸素による神経症状の悪化

慢性的な低酸素状態は、脳の回復を妨げ、認知機能や運動機能の改善を遅らせる要因となります。特に、低酸素状態が持続すると、意識障害やせん妄を引き起こすことがあります。

活動量低下と廃用症候群

呼吸困難があると、患者の活動量が低下し、筋力低下や関節拘縮が進行します。このような廃用症候群は、リハビリテーションの効果を阻害し、QOLの低下につながります。

誤嚥性肺炎と再発リスク

脳卒中後の誤嚥性肺炎は、高齢者の死亡原因の一つでもあります。一度肺炎を発症すると、全身状態が悪化し、再発のリスクが高まるため、予防が非常に重要です。

脳卒中患者に対する呼吸リハビリテーション

脳卒中後の呼吸障害に対するリハビリテーションは、患者の予後や生活の質を向上させるために不可欠です。以下のアプローチが推奨されています。

呼吸筋トレーニングの役割

呼吸筋トレーニング(IMT: Inspiratory Muscle Training)は、横隔膜や肋間筋の強化を目的としたリハビリテーション手法です。これにより、換気能力が向上し、息切れの軽減が期待されます。

体位管理とポジショニングの工夫

呼吸効率を向上させるために、適切な体位管理が重要です。例えば、上半身を30度挙上することで、肺への血流が改善し、誤嚥のリスクを低減できます。

口腔ケアと嚥下機能の維持

誤嚥性肺炎の予防には、口腔内の細菌数を減少させることが有効です。適切な口腔ケアに加え、嚥下訓練を併用することで、より安全な摂食・嚥下が可能となります。

まとめ

脳卒中と呼吸障害の関係性は深く、適切な評価と介入が求められます。呼吸筋トレーニングやポジショニング、口腔ケアを組み合わせた包括的なリハビリテーションにより、患者のQOL向上と再発予防が期待されます。脳卒中患者のリハビリを担当する際には、呼吸機能にも注目し、適切なケアを提供することが重要です。


ニューロプラスティー🧠リハビリ情報 より

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