脳出血(被殻出血)の基礎知識:内包との関係、麻痺が強く出る理由、予後の見方

目次

被殻出血の理解 ― 発生機序・病態・重症度評価を整理する

被殻出血(putaminal hemorrhage)は、高血圧性脳出血の代表的な出血部位のひとつで、内包(とくに後脚)に近接するため、急性期から対側の運動麻痺を呈しやすいのが特徴です。血腫そのもの(一次損傷)に加え、血腫拡大・脳浮腫・頭蓋内圧亢進などの二次損傷が時間経過で進行し得るため、急性期は「軽症に見える」ケースでも慎重な評価が求められます。

本項では、被殻出血を理解するうえで重要となる
「発生機序」「病態」「重症度評価」の3つに沿って、臨床で使える形に整理していきます。

被殻出血の概要

被殻出血は、基底核領域(被殻)に生じる脳内出血で、出血が内包に及ぶと重度の片麻痺や感覚障害が出現しやすく、さらに血腫が前方・後方・上方へ進展すると、失語や注意障害など高次脳機能障害も多彩になります。

発生機序(なぜ被殻に出血するのか)

被殻領域は、穿通枝(レンズ核線条体動脈など)が栄養する深部構造で、慢性的な高血圧などにより小血管が脆弱化すると破綻し、脳内出血を起こします(いわゆる高血圧性脳出血の典型)。

臨床的には、

  • 「深部出血(基底核)」である
  • 「運動線維(内包)に近い」
    この2点が、症状(麻痺)と予後に強く影響します。

病態の整理(一次損傷と二次損傷)

被殻出血も、基本構造は頭部外傷と同様に

  • 一次損傷:血腫による脳実質破壊・圧迫
  • 二次損傷:血腫拡大、周囲浮腫、頭蓋内圧亢進、脳灌流低下など
    で整理できます。

急性期に重要なのは、「今の麻痺」だけでなく、今後の悪化(血腫拡大など)を疑って追跡する視点です。

画像と病型(進展方向・脳室穿破・血腫量)

1) 進展方向(内包・前方/後方/上方)

被殻出血は血腫がさまざまな方向へ進み得て、進展方向により失語、認知・情動面の障害を含め症状が変化し得ます。

2) 脳室穿破(IVH)

脳室穿破を伴うと、意識障害や合併症リスクが上がり、管理・リハのリスク評価がより重要になります(離床の段階づけが必要)。

3) 血腫量(量が多いほど重症化しやすい)

被殻出血では、血腫量が治療方針や機能予後に関連することが報告されています。
※ここでは数値で一律に線引きせず、画像(量・圧迫・穿破)×意識×神経所見の総合評価が実務的です。

主要症状(運動・感覚・高次脳機能)

運動障害

  • 対側の片麻痺(内包近接の影響)
  • 重症例では立位・歩行以前に、座位保持・起き上がりから難渋

感覚障害

  • 対側の表在/深部感覚障害(内包後脚への影響が強いと重くなりやすい)

構音・嚥下

  • 構音障害、顔面麻痺
  • 併存症や意識状態により嚥下評価の優先度が上がる

高次脳機能(左右差)

  • 左半球:失語が問題になりやすい
  • 右半球:半側空間無視、注意障害が問題になりやすい
    加えて、左被殻出血でも血腫進展により認知・情動面の障害が残る可能性が示されています。

重症度評価(意識・神経所見・画像)

意識レベル

  • GCS/JCSで評価し、経時変化を必ず追う(悪化=二次損傷のサイン)

神経所見

  • NIHSSなどで片麻痺、感覚、失語/無視を系統立てて記録

画像

  • CT:急性期の第一選択
  • 必要に応じて追加画像で病態把握(血腫増大・穿破・浮腫など)
    脳内出血の評価と管理の枠組みとしては、AHA/ASAガイドラインが体系的です。

リハビリ介入の要点(急性期〜回復期の考え方)

急性期:目標は「悪化させない+廃用を作らない」

  • バイタルと神経所見の変動を前提に、リスク管理下で段階的に離床
  • 早期リハ開始は多くのガイドラインで推奨され、近年の整理では24〜48時間での開始が妥当だが、“それ以前の過度な超早期”は慎重という文脈で語られます。
  • 離床前後で「意識」「麻痺の質」「頭痛/嘔気」「血圧・脈拍」を必ず比較
  • 変化があれば“運動学習の問題”ではなく病態変化を疑う

回復期:目標は「麻痺+高次脳機能+活動」をセットで伸ばす

  • 麻痺だけ追うと、無視/失語/注意障害がADLを頭打ちにする
  • 画像の進展方向や左右差を意識して、**課題設定(認知負荷・環境調整)**まで含めて介入するのがポイントです。

まとめ

被殻出血は、深部出血で内包に近接するため、麻痺が前景に出やすい一方で、血腫進展によって失語・無視・注意/情動なども合併し得ます。
評価は
発生機序(深部小血管)→病態(一次/二次損傷)→重症度(意識・神経所見・画像)
で整理すると、急性期のリスク管理から回復期の介入設計まで一貫します。

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