パーキンソン病の固縮はなぜ起きる?

パーキンソン病は、運動機能の低下を特徴とする神経変性疾患であり、その代表的な症状の一つが「固縮(rigidity)」です。固縮とは、筋肉の持続的なこわばりや過剰な緊張を指し、関節の可動性を著しく低下させます。この症状は、単なる筋力低下や関節の拘縮とは異なり、パーキンソン病の進行とともに悪化し、日常生活に大きな支障をもたらします。

では、なぜパーキンソン病では固縮が起こるのでしょうか?本記事では、その病態生理や発生メカニズムを詳細に解説し、固縮の臨床的な評価方法や特徴を明らかにします。

目次

パーキンソン病における固縮とは?

パーキンソン病の運動症状には、振戦(ふるえ)、無動(動きにくさ)、姿勢反射障害、固縮が含まれます。固縮は特に日常動作の遂行に影響を与え、患者の身体活動を制限します。ここでは、固縮の基本的な特徴と他の運動症状との違いについて解説します。

固縮の定義

固縮とは、関節の他動運動に対して持続的な抵抗が生じる現象を指します。これは随意運動の有無に関係なく筋肉が過剰に緊張しているために発生し、関節の可動域制限や運動のぎこちなさを引き起こします。通常、両側性に現れますが、初期には一側の上肢から始まることが多いとされています。

筋強剛との違い

固縮とよく混同されるものに「筋強剛(spasticity)」があります。

  • 筋強剛:速度依存性の抵抗が特徴で、急速に関節を動かすと強い抵抗が生じ、ゆっくり動かすと軽減します。これは主に脳卒中などの上位運動ニューロン障害でみられます。
  • 固縮:速度に関係なく持続的な筋緊張の増加がみられ、動作の制限が顕著になります。これはパーキンソン病の特徴的な所見の一つです。

パーキンソン病の代表的な運動症状

パーキンソン病の運動症状は、黒質のドーパミン神経の変性による大脳基底核の機能異常に起因します。これにより、以下のような症状が現れます。

  • 振戦(Tremor):安静時に見られる4〜6Hzの振戦が特徴的。
  • 無動(Bradykinesia):動作の開始や遂行が困難になる。
  • 姿勢反射障害(Postural Instability):転倒しやすくなる。
  • 固縮(Rigidity):持続的な筋のこわばりがみられ、関節の可動性が低下する。

固縮の病態生理

固縮は、単なる筋力低下や関節の硬さとは異なり、神経系の異常な制御によって生じます。本章では、パーキンソン病における固縮の病態生理について掘り下げていきます。

大脳基底核の役割と異常

大脳基底核は、運動の調節や自動運動の制御を担う重要な部位です。通常、大脳基底核はドーパミンの調整によって適切に働きますが、パーキンソン病ではこの機能が破綻し、異常な運動パターンを生じます。

黒質ドーパミン神経の変性

パーキンソン病では、黒質緻密部(Substantia Nigra pars compacta)のドーパミン神経が変性・脱落し、線条体でのドーパミン濃度が著しく低下します。このドーパミンの欠乏が、基底核の出力バランスを崩し、固縮を引き起こします。

中枢神経系の異常な興奮と抑制

通常、運動は興奮性(促進)と抑制性の神経伝達のバランスによって調整されます。しかし、パーキンソン病では抑制系の信号が強まり、筋緊張が過剰に維持されることで固縮が生じます。

固縮の発生メカニズム

固縮が具体的にどのようなメカニズムで発生するのかを詳しく見ていきます。

皮質-基底核-脊髄の異常

パーキンソン病では、基底核の異常により大脳皮質への抑制的な信号が増加し、結果として運動が抑制されます。この異常が筋の持続的な緊張を引き起こし、固縮を生じます。

γ運動ニューロンとα運動ニューロンの関与

筋緊張はγ運動ニューロンとα運動ニューロンのバランスによって制御されます。パーキンソン病では、γ運動ニューロンの過活動により筋紡錘が過剰に興奮し、結果としてα運動ニューロンが過剰に活性化され、筋緊張が増加します。

姿勢反射と筋緊張の変化

正常な姿勢反射の調節が損なわれることで、筋緊張の異常が固定化し、固縮がより顕著になります。特に抗重力筋に異常な緊張が見られます。

固縮の評価と臨床的特徴

固縮は、臨床的にどのように評価され、どのような特徴を持つのでしょうか?本章では、診察方法や鑑別ポイントについて詳しく解説します。

固縮の診察方法

固縮の評価には、関節を他動的に動かしながら筋の抵抗を確認する方法が一般的です。特に、肩関節や肘関節での診察が重要です。

歯車様固縮と鉛管様固縮の違い

  • 歯車様固縮:関節の動きに対して、ガクガクと断続的な抵抗が生じる。
  • 鉛管様固縮:滑らかで均一な抵抗が持続する。

他の神経疾患との鑑別ポイント

固縮はパーキンソン病以外の神経疾患(進行性核上性麻痺、多系統萎縮症など)でも見られるため、慎重な鑑別が必要です。

まとめ

パーキンソン病の固縮は、黒質ドーパミン神経の変性による基底核の機能異常によって引き起こされます。固縮の病態を理解することで、より適切な治療やリハビリテーション戦略を立てることが可能になります。


ニューロプラスティー🧠リハビリ情報 より

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