
はじめに
脳血管疾患は日本において主要な死因の一つですが、その前触れともいえる「一過性脳虚血(TIA: Transient Ischemic Attack)」は、一見軽度の症状であっても放置すると脳梗塞へと移行するリスクがあります。短時間で症状が消失するため見過ごされがちですが、そのサインを適切に理解し、早期に対応することが重要です。本記事では、一過性脳虚血の原因や症状、診断方法、治療・予防策について解説します。
一過性脳虚血とは?
一過性脳虚血の定義
一過性脳虚血とは、一時的に脳の血流が途絶えることによって発生する神経症状を指します。通常、24時間以内(多くは1時間以内)に症状が消失するのが特徴です。血流が回復することで脳組織へのダメージが最小限に抑えられるため、明確な脳梗塞の病変は認められません。しかし、その後の脳梗塞リスクが高いため、早期の対応が必要です。
発症のメカニズム

一過性脳虚血の主なメカニズムは、血栓や動脈硬化による一時的な血流障害です。動脈が狭くなったり、血栓が一時的に詰まったりすることで、脳の特定部位への酸素供給が途絶え、神経症状が引き起こされます。通常、短時間で血栓が溶解または流れ去るため、脳梗塞には至りませんが、何度も繰り返す場合は脳血管の深刻な障害を示唆します。
一過性脳虚血と脳梗塞の違い
一過性脳虚血と脳梗塞の決定的な違いは、神経症状が可逆的かどうかです。
脳梗塞では血流が長時間途絶えるため、神経細胞が不可逆的に損傷されるのに対し、一過性脳虚血では血流が回復することで症状が完全に消失します。しかし、一過性脳虚血を経験した人の約30%が5年以内に脳梗塞を発症するとされており、警戒すべき疾患です。
一過性脳虚血の原因
動脈硬化と血栓

動脈硬化は一過性脳虚血の最大の要因です。
動脈硬化により脳血管が狭窄し、小さな血栓が一時的に血流を遮断することで発症します。特に高血圧や脂質異常症、糖尿病がある人は動脈硬化が進行しやすいため、リスクが高まります。
心房細動などの心疾患
心房細動は、一過性脳虚血や脳梗塞の強い危険因子とされています。不整脈により心臓内で血流が滞り、血栓が形成され、それが脳へ飛んで血管を塞ぐ「心原性塞栓症」を引き起こすことがあります。
その他の危険因子
一過性脳虚血のリスクを高める要因には、喫煙、過度な飲酒、肥満、ストレス、運動不足などが挙げられます。また、遺伝的要因も関与することがあり、家族に脳血管疾患の既往がある場合は注意が必要です。
一過性脳虚血の症状
一過性の運動・感覚障害
片側の手足が突然動かなくなる、またはしびれるといった症状が特徴的です。これは、一時的に脳の運動野や感覚野への血流が低下するために起こります。
言語障害や視覚異常
言葉が出にくくなる、ろれつが回らないなどの症状が突然現れることがあります。また、一時的な視野欠損や視力低下も報告されています。
めまいやふらつき
脳幹や小脳の血流が一時的に低下すると、バランス感覚が乱れ、めまいやふらつきが生じることがあります。特に、高齢者では転倒のリスクが高まるため注意が必要です。
一過性脳虚血の診断と検査
症状の評価と問診
医師は患者の発症状況や症状の持続時間を詳細に問診し、一過性脳虚血の可能性を評価します。症状が完全に回復している場合でも、診察を受けることが重要です。
MRI・CTによる画像診断
MRIの拡散強調画像(DWI)やMRA(磁気共鳴血管撮影)を用いて、脳の血流状態や血管の狭窄を評価します。CTでは脳梗塞との鑑別が可能です。
血液検査と心電図検査
動脈硬化の進行具合や心房細動の有無を調べるために、血液検査や心電図検査が実施されます。特に、コレステロール値や血糖値が重要な指標となります。
一過性脳虚血の治療と予防
急性期の対応
TIAを経験した場合、直ちに専門医を受診し、脳梗塞の予防措置を講じる必要があります。
場合によっては、入院管理のもとで詳細な検査と抗血栓療法が行われます。
再発予防のための生活習慣改善
禁煙、適度な運動、バランスの良い食事が予防の基本となります。また、高血圧や糖尿病の管理も重要です。
内服薬・抗血栓療法の重要性
抗血小板薬(アスピリンなど)や抗凝固薬(ワルファリン、DOAC)が処方されることがあり、医師の指示に従い適切に服薬することが再発予防の鍵となります。
一過性脳虚血の影響と注意点
発作後のリスク管理
TIAを経験した人は、今後の脳梗塞発症リスクが高いため、定期的な診察と検査が不可欠です。
日常生活での注意点
血圧管理、ストレス軽減、適度な運動を継続し、生活習慣を見直すことが重要です。
家族や周囲のサポートの重要性
TIAを見逃さず、適切な医療機関へ迅速に受診させることが家族や周囲の役割として求められます。
まとめ
一過性脳虚血は、一見軽微な症状であっても脳梗塞の前兆である可能性が高いため、決して軽視してはいけません。
適切な検査と治療を受けることで、将来的なリスクを軽減できます。日頃から生活習慣を見直し、発作があれば迅速に対応することが何よりも重要です。
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